虫垂(ちまたでは『モウチョウ』、また我々の業界では「アッペ」と呼ばれ親しまれている?)とは、大腸の最初の部分(実はここが盲腸と呼ばれる)の下端にぶらさがっている長さ五センチ程のミミズのような腸です。〔図1〕。 ここがはれた状態になると、右の下腹が痛くなってきます、これが虫垂炎と呼ばれるものです。さてこの虫垂炎は、はじめは虫垂内腔だけの炎症にとどまりますが、ひどくなると破れて(穿孔)おなかの中に膿がばらまかれ、腹膜炎を発症して大変なことになります。
急性虫垂炎の診断は、最終的にはおなかを開けてつまみ出した虫垂がはれているかどうかで決まります。実はこれを術前に診断することは典型例では容易なのですが、右下腹部痛を起こす他の病気も決して少なくなく、診断に難渋することもしばしばです。 「もし虫垂炎なら破れると大変ですから今のうちに手術しましょう、」と説得して開腹したところ正常な虫垂が出てくることもあります。また「私は昔、『モウチョウ』になりましたが薬で散らしてもらいました。」という人に出会います。そんなときは「よかったですね。」と笑顔で応対しますが、これは「急性虫垂炎の可能性もあるが今一つ確証に欠ける、症状も軽そうなので抗生物質を投与して様子を見るか」というときなのです。このような場合、急性虫垂炎でなかった可能性が大いにあります。
急性虫垂炎の治療の最終目標は、虫垂が破れる前に急性虫垂炎の診断を確実につけ、虫垂切除術をおこなうことです。 以前よりCTが虫垂炎の診断に有用であるといわれていましたが、当院では平成10年2月よりヘリカルCT(非常に高速に撮影できる最先端の機械)が設置され、急性虫垂炎を疑う患者さんにこれを受けてもらうことにしました。 すると平成9年以前の当院の虫垂切除術が年間60〜70例程度であったのが、平成10年は37例に減少しました、これは、もちろん診断率が向上したことも原因のひとつですが、このCTにより急性虫垂炎と診断がつき、さらにその炎症の程度が比較的軽度と判定できたため(以前のように診断がつかぬ状態ではなく)、安心して手術をせずに抗生物質にて治療できる症例が増えてきたためでもあります。 最近はこのCT撮影時に経口による簡便な造影検査を併施してより高い診断率を得ることができはじめています。