骨折したことありますか
私は自慢にはなりませんがすでに3回の骨折を経験しています。痛いし、不便だし治るまでに時間もかかりますよね。できればしたくないですが生きている限り骨折を完全には防げません。ひとたび骨折を起こせば生活は制限され仕事もできずかなりの損失が発生します。今も昔もギプスや手術によって治療していますが、骨折部位や折れ方、創がある骨折(開放骨折)かどうかなどさまざまな要因によって順調に治ることもあれば治りにくかったり、また場合によっては骨がつながらないこともあります。また治るまでに少なくとも1ヶ月半〜2ヶ月の長い期間がかかります。少しでも早く、確実に治れば本人、家族や社会にとってこれほどよいことはありません。違った見方をすれば早く治ったほうが医療費も少なくてすむとも言えます。われわれ整形外科医にとっていかに早くいかに確実に骨癒合させるかということが課題であり骨折治療も日々進歩しています。そこで最新の骨折治療のひとつについて紹介したいと思います。
低出力超音波パルス
LIPUS(リーパス)治療
超音波という言葉は日常的にもよく耳にするものだと思います。超音波が骨折治療に有効であるとの報告は世界では1983年頃から始まり、日本国内でも1998年から保険適応が認められ治療として使えるようになりました。低出力超音波パルスLIPUS(リーパス)治療と呼んでいます。これは身体に当てても何も感じないような低い出力の超音波を断続的(パルス状)に骨折部位に当てるものです。(図1)
実際には非常に簡単で骨折した部位の皮膚にプローベ(探子)を設置して1日たった20分間照射するのみです。病院で受ける内臓などのエコー検査を思い浮かべてみてください。自分には痛みや熱を感じることはありませんよね。超音波がなぜ骨折の治療に影響するのかはまだ不明な点がありますが、超音波振動による機械的な刺激が骨折の治癒にかかわるさまざまな細胞を活性化させ治癒反応を促進させる働きがあるようです。治療期間が40%も短縮できるとの報告もあります。当初は3ヶ月以上経過して治らないような難治性骨折のみの保険適応でしたが、今までの治療実績が評価されていよいよ今年度の診療報酬の改定で、新鮮骨折にも保険適応が拡大しました。これを機会に早速当院でも病棟に治療器を導入しました。(図2)
今後積極的に使用していきたいと思っていますが、まだ治療の適応として四肢の開放骨折・粉砕骨折の手術後に限るとの制限がありすべての骨折に使えるわけではではないことと治療費が少々高いのが問題点です(3割負担で約1万5000円)。今後この治療法が普及すればすべての骨折に対して使用できるようになり、治療費も安くなるかもしれません。
スポーツの世界では
骨折した時には積極的にこの治療が取り入れられています。2002年サッカーワールドカップ直前に某イギリス人男前選手が下腿の疲労骨折を生じ本戦出場が危ぶまれていたところ、この治療によって大会に間に合って活躍できたそうです。また最近ご結婚された某日本人メジャーリーガーが2006年に手首を骨折した際に手術後にこの治療を行い約4ヶ月で試合に復帰できたという話もあります。
おわりに
骨折治療は時代とともに着実に進化してきています。また最近では内服などの治療により骨量を増加させ骨折を予防できるようにもなってきています。骨量に自信がない方や骨折の経験がある方は骨量検査をしてみませんか。骨量の低い方はまずは骨を強くして骨折を予防することが大切です。しかしもし骨折したならば早く確実に治す必要があります。まだまだ難しい課題ですがこのような新しい治療を取り入れながら少しでも皆さんのお役に立ちたいと思っています。
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