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●ちょっと気になる病気の話

口から食べること

 
仙田直之
松江生協病院
耳鼻咽喉科
 

「口から食べること」と言われて、当たり前のことと思われるかもしれません。ただ、脳卒中などで喉の麻痺が生じて食事や唾液が誤って気道に入り、誤嚥性肺炎を起こすため「胃瘻」と言われるチューブ栄養や点滴による静脈栄養で食事をする場合もあります。現在、肺炎は日本の全死亡原因の第四位ですが、高齢者では第一位です。その中でも誤嚥性肺炎が多くを占めていると言われ、最後まで口から食事を食べることは簡単ではないのです。今回、この口から食べる(摂食嚥下)過程を5つに分けてお話したいと思います。

先行期

 まず食事を見て、匂いを楽しみ、箸で感触を確かめることから始まります。酸っぱいもの見ると唾液が出てきませんか。食事をしっかり見て食べることで、スムースな嚥下に必要な唾液分泌が良くなり、嚥下に必要な神経、筋肉に信号が伝わり、食事を口に入れてからの動作が良くなるのです。したがって見て食べることは大切です。

準備期

 口の中で咀嚼運動をして食べやすい大きさや形にする作業です。義歯の不具合があると充分咀嚼することができずに大きな塊を飲み込んでしまい、喉に詰まらせることがあります。「8020運動」をご存知でしょうか。フィンランドでは「八十歳になっても自分の歯を二十本以上保とう」という運動を、国を挙げて取り組み成功しています。誤嚥性肺炎の多くは、食事の誤嚥より虫歯菌等を含んだ汚い唾液の誤嚥によって誘発されると言われています。虫歯の予防、治療、口腔ケアは、食事をする上でも誤嚥性肺炎を予防する上でも大切です。

口腔期

 咀嚼してまとめた食物を喉に運ぶ作業です。舌の運動が悪くなると、食事をなかなか喉に送り込むことが出来ません。元々の病気の治療はもちろんですが、舌の運動訓練も行います。舌の運動訓練は、舌の動きを良くするとともにスムースな嚥下に必要な唾液分泌が良くなりますので、毎食前に行うと良いでしょう。

咽頭期

 ゴックンと飲み込む作業です。喉は息も食物も通る交差点になっています。普段は肺につながる気管の入り口が開いていますが、飲み込む時、一瞬(一秒未満)気管の入り口を閉じて、食事が気管、肺に入らないようにしています。脳卒中で喉の動きが悪くなると、この一秒未満の速い動きに上手くタイミングを合わせることができなくなり、食物が気管、肺に入ることがあります。その時、強い咳で気管に入った食物を出すことができれば良いのですが、呼吸が弱く、上手く咳が出せないと肺炎に至る場合もあります。この咽頭期の障害がある場合、息を止めて飲み込むよう意識する(息こらえ嚥下)、テレビや新聞など見ずに食事に意識を集中する(意識下嚥下)ようにします。水分は気管に入りやすいので、増粘剤で水分にトロミを付けると良くなる場合もあります。しっかり咳がでるよう普段から大きな声を出し、歌い、体を動かすレクリエーションに参加することも大切です。

食道期

 食物が食道を通過して胃に入る過程です。ここでは食道や胃に食物の通過を阻害する病気がないか、胃カメラなどの健診を受けておくことが大切です。 以上のようなことに気を付けて元気に食事を続けて下さい。


**この記事は松江保健生協の機関紙「強い体」からの引用です。

 

 

 

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