| 最後の第3回は、心臓の動脈硬化のお話しです。心臓を栄養する冠動脈が動脈硬化を起こすと狭心症や心筋梗塞を起こします。病変が出来ると薬で元に戻すことは難しく、カテーテル治療や心臓バイパス手術などが必要となることがあります。
労作性狭心症
動脈硬化がゆっくりと進んで慢性的に血管が狭くなった状態です。労作時の胸痛・息切れなどが主な症状です。後で述べる急性冠症候群とちがい、緊急検査を必要とはしませんが、症状のために日常生活に不都合が出たり、心臓の機能が低下することもあるので、カテーテル検査・治療などを計画することが必要です。
不安定狭心症・心筋梗塞(急性冠症候群)
動脈硬化が始まると、血管の表面にプラークという柔らかい「垢」が溜まります。プラークに傷がつくと、そこに血糊が付いて急に血管を狭くしたり詰まらせたりします。詰まる前が不安定狭心症(症状は最近急に胸痛発作が起きるようになった、じっとしていても胸痛発作がある、など)、詰まると心筋梗塞(症状は胸痛、背部痛、呼吸困難が持続する、など)になると考えられています。最近はこの2つをまとめて「急性冠症候群」と呼んでいます。急性冠症候群の場合は直ちにカテーテル検査・治療を行うことが大切です。特に心筋梗塞は一刻も早く治療を行う必要があります。(図1)
カテーテル治療(PCI)
狭心症や心筋梗塞が疑われれば、冠動脈造影(カテーテル検査)を行い、冠動脈に狭いところや詰ったところがあれば手術やカテーテル治療を考えます。ここではカテーテル治療(PCI、いわゆる風船治療)を説明します。
病変のある血管を、先端に風船のついたカテーテルで押し広げます。血管は風船で広げても、広げた直後にしぼんだり、血管の表面がささくれ立って十分に広がった状態を保てないことがあるため、しばしばステントという筒状の金網を留置して、広がった状態が保てるようにします。(図2・3)
この治療は短時間で肉体的な負担が少なく行えるという長所があります。短所としては、治療の数ヶ月後に、5人に1人程度、広げた血管がまた狭くなる現象(再狭窄)が起き、再治療を要する点です。最近は、再狭窄を減らす目的で特別な薬を塗ったステント(薬剤溶出性ステント)が登場し、当院でも多くの方がその恩恵を受けています。薬物溶出性ステントの治療にも短所があるため、患者様の状態に応じて判断しています。また、施設基準の関係で当院では行っていませんが、石灰分が沈着した硬い血管をダイヤモンドのヤスリで削るロータブレータといった治療もあります。
当院での治療状況
当院では、2000年8月に第1例目のPCIを行い、以後着実に実績を重ねてきました。2006年は約250例の治療を行い、県内でも松江赤十字病院、県立中央病院に次いで3番目の治療実績を誇る医療機関へと成長しています。当院では可能な限り手首の動脈からの検査・治療を行っており、患者様のストレス軽減にも積極的に取り組んでいます。また、ご高齢の方や認知症をお持ちの方でも、日常生活を維持するために必要であれば積極的に検査・治療を行っております。循環器診療を担当する医師も6名に増え、24時間365日、緊急での検査・治療が施行できる体制を整えていますので、安心して受診していただければと思います。なお当院には心臓血管外科がないため一部の患者様に当院で治療が完結できないこともありますが、その場合は他院と連携を取って、最もふさわしい治療をお勧めしています。
おわりに
自家用車で来院される急性心筋梗塞の患者様をしばしば拝見しますが、これは大変危険です。心筋梗塞は、症状がそれほど強くなくても、不整脈で心臓が止まることもあります。急性心筋梗塞や不安定狭心症を疑ったときには、遠慮なさらず、救急車をご利用になってください。 |