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●ちょっと気になる病気の話

眼瞼けいれんの最新治療

孫 明子
生生協病院 神経内科医師

眼瞼痙攣(がんけんけいれん)とは

 眼の周りには眼輪筋(がんりんきん)といって、瞼の開閉に関わる筋肉があります。眼瞼痙攣は、この両眼の眼輪筋に自分の意志とは関係なく力が入る病気で、中高年に好発します。原因はまだわかっていません。

 症状は、「目を開けていられない」とか、「眼がパチパチする」、「まばたきが多くて自分でも困る」、もっとも重傷になると目を開けようとするとまぶたが震えるばかりで(これがけいれんと呼ばれる理由なのですが)「目が開けられない」。しかし大多数の軽い患者さんは、ちょっと見たところ全く正常です。

 その症状は明るい場所や精神疲労で悪化し、徐々にひどくなると眼瞼を閉じる力が続くようになり、日常が続くようになり、日常生活に支障をきたすようになります。症状の進行は比較的ゆっくりしていますが、そのまま放置して自然に治る病気ではありません。

顔面痙攣(がんめんけいれん)とは

 片方の眼の周りの軽いピクピクした痙攣から始まり、次第に同じ側の額、頬、口、顎などへ広がって行き、顔半分がしかめ面をしたように痙攣します。四〇代〜七〇代の中高年の方に発症することが多いと言われています。原因は、ほとんどが不明であるが、脳の血管が顔面神経を圧迫しておこることがあります。

これまでの治療

 治療は、内服薬、顔面神経ブロック、手術などが行われていますが、原因不明のため根本的に治す治療は現在のところ確立されていません。そこで近年、ボツリヌス毒素による治療が試みられています。

ボツリヌス毒素治療 〜毒も薬となる〜

 ボツリヌス毒素とは、食中毒の原因として知られているボツリヌス菌が産出し、神経から筋肉への伝達を阻害する作用をもつ神経毒素です。こう説明すると、非常に恐ろしい毒素のようですが、食中毒の場合は菌が食物と一緒に体内に入り、毒素が放出され、腸から大量に吸収される結果、全身の筋肉が麻痺するという中毒症状です。しかし、長年の研究の結果、この毒素を抽出し、痙攣している筋肉に直接少量だけ注射することで、その筋肉がゆるみ、痙攣がおさまるという効果を医薬品として利用できるようになりました。日本では一九九六年から眼瞼痙攣の治療として保険適応となりました。二〇〇〇年から顔面痙攣に対しても保険適応となりました。

実際の治療方法

 痙攣している眼瞼や顔面の皮下にごく少量のボツリヌス毒素を皮下注射します。注射後、二〜五日で効果が現れてきます。二〜四週間で効果が最大になります。三〜四ヵ月で徐々に減弱していき、再び注射前の症状に戻ります。まばたきが多くなってきた、まぶしさを感じるようになってきた、などの症状が再び出てきたら、再投与の時期となります。したがって三〜四ヶ月ごとに注射をくりかえす方が多くいらっしゃいます。

 副作用としては、治療後、注射した筋肉の力が弱くなりすぎて、瞼を閉じるのが難しくなったりする場合があります。痙攣している筋肉以外にも薬の作用が効いてしまった場合、ものが二重に見えたり、顔の表情が少し変わってしまうことがあります。しかしこれらの副作用は薬が効きすぎている為で、薬の作用が減少し元の状態に戻るにつれて、そのような副作用はなくなってきます。

 費用は注射剤一本十万円ですので、一割負担で一万円、三割負担で三万円となります。高価な印象を受けられるかもしれませんが、実際に一度注射を受けられた患者さんは、繰り返し注射を希望される方が多くいらっしゃいます。

 お悩みの方は、神経内科外来にご相談ください。


**この記事は松江保健生協の機関紙「強い体」からの引用です。

 

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